『「普通」に嫌われた弱虫なボクが
悲劇的なキミを救えたとしたら、
きっとこの「物語」は、みせかけの
「奇跡」なんかでは終わらない』
・概要
星物語第0話『心を汲む話』。
作者 七夜志希が実際に『星物語:ジラーチ・アナザーストーリー』やその他作品の執筆にかかわるきっかけを作った文章。
主人公は『星物語:ジラーチ・アナザーストーリー』などの作者である七夜志希本人。まだ病んでしまう前の頃の七夜志希である。
登場人物は現在の七夜志希と過去の志希、そしてジラーチ(正確には病んだ志希が生み出したタルパとしてのジラーチ)。最後に二人の人間(石垣せりな / 陽ノ下さくた)が、新しい二人(柊 なず / 七夜ひかり)に変わる、という演出があるが、どことなく不穏な演出で終わる。
・『心を汲む能力』について
『心を汲む能力』=共感力の暴走によって志希が聞いてしまう声は、どれもネガティブなものが多く、ノイズとして扱われることが多い為、彼はジラーチと行動することでこの能力の自動発動自体を抑制しているが、電車などでマナーの悪い中年男性の近くなどにいると、どうしても自動発動してしまう。ジラーチによって抑制できるノイズは『ある程度の周波』を維持していれば遠く離れていても可能であるのだが、やはりぬいぐるみを抱いているときが一番強い。
・限定公開のMVの内容(ネタバレ)
現在の志希が子供時代の志希を想起するという内容。
シルエットで一人の大人と子供達が登場するシーンがあり幼い志希が逃げ出すシーンがあるが、ここに登場する子どもたちのうち二人がシルエットながら強調して描かれており、志希はそれに激しく威圧されている描写がある。これは志希が中学校時代に受けたいじめの描写であると作者である七夜志希は語る。
ジラーチが登場する歌詞「今日も淡々と 目覚める『今日』を待つけれど 誰かと逢った記憶も消えちゃうんだよ かなしいよ」という言葉は、1000年という遠い時間の中で志希のタルパとしてのジラーチが、マサトやサトシたちと冒険した過去を忘却しかけており、孤独に戻ってしまうことをひどく恐れていることを表している。実際その後の「願いの"声"は純粋な
こどものボクのようなんだ」という文章が孤独を恐れる志希の感情と一致することを示す。
志希がジラーチと出逢ってから眼の色が変わるシーンもあり、彼女との出会いによって共感力の暴走を克服しつつあることを示している。
・文章
「いじめないでよ」って泣いてばっかり
震えちゃうと動けないのです
孤独を敏感に恐れている
子供のボクを『常識(ふつう)』は嫌った
同じ様に雨に濡れている
仔猫に理解を求めていた
自分勝手に抱き寄せていた
「キミはボクをいじめないよね?」って言って
「『親友』になろう!
"言葉"じゃない、"心"でさ。
話がしたいよね!」
そんなボクに 悲劇が待ってた
聞こえたんだ "声"が盛大に
閉ざした心をノックした
「アイツは汚い」「うるさいハエ」
「キモすぎる」「死んじゃえよ」なんて
『悪意の声』が一斉に
拒んでたって突き刺さる
言葉にしない悪意が眼に焼き付いて
もう泣きそう
「希望を願った"罰"だ」って
掲示板の文字列は
ボクに深い傷を植え込んでた
そして今日も文字は責め立てる
流れ込んで ボクを蹴りつける
『他人の心を汲み取れる』
面妖なボクを 常人(じょうじん)は嫌った
逃げ出そうと 異次元(そと)へ飛び出す
ここじゃもう 息も出来ないから
ヒトの憎悪の 眼を避けてさ
ボクはそっと 駆け出した
"どこか" へと
迷い込む森
洞窟の静けさに
また怯えちゃう様な
そんなボクを 誰かが待っていた
聞こえたんだ
「今日も淡々と 目覚める『今日』を待つけれど
誰かと逢った記憶も消えちゃうんだよ かなしいよ」なんて
『願いの"声"』は純粋な
こどものボクのようなんだ
「『心』が怖い。
明日を変える『勇気』も足りない…?」
「そんなことない」手を振った
文字羅列は繊細で
ボクはそっと慎重に描いてた
踞るポケモンは言った
「昨日も、今日も、一昨日も
広い世界が簡単に崩れちゃう夢を見てた」
「こわいよ」なんて感情も
「つらいよ」なんて泣き声だって
"ゲーム"みたいに、救い出してしまえたなら?
芽生えた今日の感情を
握ったペンで 書き出して
キミに語ろう
「それでも、大丈夫だよ。泣かないでよ」って
『願いの声』の心臓を
包んで笑い合えたなら
『心』を救う『物語』を
ボクは『やさしさ』と呼べる
進み始めた毎日の
ボク"たち"は "同体"で
掲示板の文字はもう 映らない