ボクは七夜志希。
どこにでもいる人間。その一人。
でも変わってる部分がある。
コミュニケーションはドヘタクソだけど、創作センスは抜群で、
PCのタイピングだけは上手い。
何故か記憶力だけは良くて、人の2倍以上ある。
国語や文学に精通。その代わり数学は致命的。
愛称は「ジラーチ先生」。いつもポケットにしまったポケモンからついたあだ名。
ポケモンと戦隊とライダーが大好きな、どこにでもいそうな男の子。
ヒーローに憧れて、やけに世話焼きで、バカにされては、
家でぬいぐるみに泣き寝入りする。
当時は男女差別もひどい時代。
女性が戦隊とライダーを見ることなど、烏滸がましいと、
男性がプリキュアにハマるなど、へんたいふしんしゃさんかと。
そんなひどい目で見られる。
そんなボクの主観が変わった話がある。
2008年の話だ…………。
[A Shiki Nanaya Novel]
[The JirachiArt's Production]
<Back to 2008>
人が溢れる街、仙台。
その真下にある街、名取。
高度開発地であった杜せきのしたを中心として、
ダイヤモンドシティという複合施設が誕生した。
そして、当時は男女差別がひどく、男女違って当たり前
というのが一般的な考えだった。
幾千の夜を超えて、今日は11月08日。
そう、ボクの誕生日………。 そして
偶然の一致によって、導かれたような
一つの出逢いによって、運命が決まってしまった日。
当時ボクは生まれつき持った才能を発揮していた天才児だった。
でも、内気で、コミュ障で、知らない人と話すなんて論外中の論外。
そんなボクは、母の案内で誕生日である今日、
ダイヤモンドシティ内にある映画館を訪れていた。
…突然だが、男の子なら何に憧れるだろうか?
スーパー戦隊?
仮面ライダー?
それともウルトラマン?
ボクはヒーローというものに憧れていた。
しかし主人公気質とは程遠い自分の姿に、
失望というものも軽く感じていた。
そんなボクの目に映ったのは、
女の子たちだ。 しかも大勢。
何を待っていたんだろう、と一人ふらっと映画館の中に吸い込まれる。
そして現れたのは、女の子たちの憧れ『プリキュア』だった。
そう、この日はプリキュア映画の公開日。 しかも初日だった。
そのテーマは、偶然にも『主人公の誕生日』。
誕生日…………
「もしかして、同じ誕生日の子っていたりするー!?」
司会のお姉さんの声に、ビクッと反応して足が震えだす。
そして棒立ちになり
「は、はいっっ!!!」
……終わった。
女の子たちの視線はボクに釘付けになった。
数々のヒーローショーを見てきて、写真なんて撮れなかったボク。
そんなボクと初めて一緒に写ったのは、まさかのプリキュア。
こんなことがバレたら学校で笑い者にされる、と
ボクはずっとピンク色の土台でプリキュアと作り笑顔を浮かべていた………
これが、ボクと一人のプリキュア…… 夢原のぞみ/キュアドリームとの
長い長い奇妙な縁の始まりだった。
Film.000 ふたりの希望_
ボクは家に帰った後、作り笑顔を作ったことに否を感じて
ひどく落ち込んでいた。
プリキュアと手を繋いだ。
写真まで撮った。
男子禁制の領域を侵した。
現代なら許されることも、この時代では大罪だ。
許されるはずがない。絶対に笑い者にされる。
この事実をどうにかもみ消したくて、脳内では大量のアイディアを浮かべた。
しかしボクの中でもみ消したとしても、あの時映画館にいた女の子たちは
しっかりボクを覚えているだろう。
じゃあどうする?
そうだ、逆の立場で考えれば良いんだ。
女の子たちの力を借りよう!
女の子たちにウケる創作物を作って、単純なコミュニティを作り、
男の子相手でもプリキュアが馴染める世界を構築すれば良いんだ!
その時は、そうとばかり思っていた。
そして毎週訪れる日曜午前8:30。 キュアドリームの顔を見るたびに、
ボクと彼女の差は縮まっていくばかり。
でもきっと隠れてプリキュアを見ている男の子もいるはずだ…
そう思ったとしても、言い出せない。学校の場では全てがオープンだ。
いくらボクが天才性とカリスマ性を持っていたとしても、常識を捻じ曲げるには及ばない。
彼女の持つ『カリスマ性』と、ボクが持つ『カリスマ性』には相反する2つの面があった。
そしてなにより、彼女はボクより大人びていた。
絶対的な女の子たちの憧れ。
その姿そのものを表した彼女の姿は
ボクの後ろで神々しく光る影としてずっと映るようになった。
<Now: A.D.2023>
そして今、ボクは小説作家兼プログラマーとなったが
絶対的なカリスマ性は失われ、今や障害の塊で
あのときの『彼女』に見せる顔すらない。
でもある女の子との出逢いが、
ボクを勇気づけさせてくれた
でもその子も職場いじめに遭って、自殺。
…で、プリキュアとの関係はどうなったのかって?
2012年、ボクは男女間のボーダーを破ることには成功した。
男の子がプリキュアを見ることは、もはや普通というか当然になった。
でもその結果がこれだよ。
口癖は『眠い』『怠い』『めんどい』『死にたい』
最強にして最悪のメンヘラ男子。
同じ境遇の女の子たちの心を癒す力を持つが
それすらも『面妖だ』とバカにされ
クソみたいな掲示板に罵詈雑言を乗っけられて
クソみたいなストーカーに追われる毎日。
それを乗り切って疲れ果てた2023年。
…あの『彼女』は再び、わたしの前に現れた。
「わたし達は、"未来"に向かって進んでいる…。
目の前にある道を歩いたり、走ったり、立ち止まったり引き返したり、
時に迷いながら、『道』を選んで進んでいく。 なりたい自分になれるように---。
より良い"未来"を目指して。」
「"未来"は一つじゃなくて、どの『道』を選ぶかで、
行き先が変わる。」
すっかり大人びた彼女は、そんな言葉をボクに投げかけた。
真っ暗闇の中、ピンク色の蝶が、わたしの脳裏を、夢を、
道を照らすように横切った。
そう、この奇妙な縁は、
まだ続いていくんだ……………。
To Be Continued>_
・Staff
原作 七夜志希『おはよう希望先生』
ジラーチ文庫dPDF-V6.0掲載
制作協力 東堂いづみ
名取市
イオンモール名取エアリ(旧ダイヤモンドシティ名取エアリ)
ワーナー・マイカル・シネマズ名取(現イオンシネマ名取)
映画Yes!プリキュア5GoGo!製作委員会
ノベル執筆 七夜志希
NMAX編集 七夜志希
エンディングテーマ
『希望先生』
作詞: 七夜志希
原曲: キヨ / 有頂天猫
歌: 七夜志希
ノベル制作 JirachiArt's
Project-ReHope
監督 七夜志希
制作 おはよう希望先生製作委員会
JirachiArt's
Project-ReHope